お子様ランチ

http://nako.cocolog-nifty.com/nakolog/2004/10/post_7.html

東京ディズニーランドの中にあるレストラン。ある日、若い夫婦が二人でそのレストランに入りました。店員を呼び、なんと、「お子様ランチを2つ下さい。」とオーダーしました。

 アルバイトの店員は驚きました。そして、ディズニーランドの規則で【お子様ランチを提供できるのは9歳未満】と決まっているのを思い出しました。「申し訳ございませんが…」とその旨を告げ、別のメニューを勧めました。

 すると、その夫婦はとても悲しそうな顔をしたのでした。

 店員は事情を聞いてみることにしました。「実は…」と奥さんの方が話し始めました。

 「今日は、亡くなった私の娘の誕生日なんです。身体が弱くて、娘は最初の誕生日を迎えられませんでした。家族三人でディズニーランドに行って、お子様ランチを食べに行こうねって思っていたのに、それが果たせなかったんです。それで、今日はその娘の為に、せめてお子様ランチを頼んであげたかったんです。」

 店員は話を聞き終えた後、「かしこまりました。」と答えました。

 そして、その夫婦を二人掛けのテーブルから、四人掛けの広いテーブルに案内しました。さらに、「お子様はこちらに」と、夫婦の間に子供用のイスを用意しました。

 やがてそのテーブルには、お子様ランチが3つ運ばれてきました。その店員は笑顔でこう言いました。「ご家族で、ごゆっくりお過ごし下さい。」

 
 この行動はマニュアル違反なのですが、上司や会社側(ディズニーランド)がこの店員をとがめることは、もちろんありませんでした。この夫婦から後日届いた感謝状にはこう書かれていました。

 「お子様ランチを食べながら、涙が止まりませんでした。まるで娘が生きているように、家族の団らんを味わいました。こんな体験をさせて頂くとは、夢にも思っていませんでした。もう、涙を拭いて、生きていきます。また来年も再来年も、娘を連れてディズニーランドに行きます。そしてきっと、この子の妹か弟かを連れて行きます。」

 このエピソードと感謝状の内容は、ディズニーランドの係員(“キャスト”と呼ぶそうです)に公開されました。キャスト達はこの話を聞いて、自分たちのサービス精神とその喜びを改めて確認することになったそうです。そして、ちょっとこぼれた涙を拭いて、笑顔でそれぞれの職場に向かったのでした。